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■『戦旗』1612号(4月20日)6面

  
外国人と共に闘うために
   入管体制下の「在留資格」

                              
けらん



 入管闘争を推し進め、在日・滞日外国人との団結を形成していくためには、外国人の置かれている状況をリアルに認識する必要がある。その際、まず重要なのが「在留資格」について知ることだろう。その種類や有無によって、外国人のあらゆる権利の制約の度合いや、福祉からの排除の範囲、その地位の「安定度」を把握することができるからだ。そのために、ここでは在日・滞日外国人の「在留資格」について基本的な情報を記しておく。

●1 在留資格とは何か

 まず、日常会話やニュースでは区別せずに使用されているが「ビザ」と「在留資格」は厳密には異なる。ビザ(査証)は入国審査時の推薦状のような役割を持つものであり、外国の日本大使館が発行する(ビザがあっても入国拒否には遭う)。一方、在留資格は出入国管理庁の審査によって出される「許可」であり、これによって初めて外国人は日本に適法に滞在する根拠を得ることができる。
 在留資格の種類は、おおよそ三〇種類(詳細は入管のホームページなどを参照)。在留資格別では、「永住者」が八〇万八七二人(構成比27・8%)、次いで「技能実習」が四〇万二四二二人(構成比13・9%)、「特別永住者」の地位をもって在留する者が三〇万九二八二人(構成比10・7%)、「技術・人文知識・国際業務」が二八万八九九五人(構成比10%)と続く(二〇二〇年六月時点の最新統計)。
 「特別永住者」は、一九九一年施行の「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法(入管特例法)」に基づき、サンフランシスコ講和条約で日本国籍をはく奪された者とその子孫に与えられている在留許可だ。これは主に、旧植民地出身者の在日朝鮮人、台湾人に付与されており、一般の滞日外国人が「特別永住者」になることは原則不可能だ。一方、敗戦前から日本に居住している朝鮮人でも、敗戦後の混乱期に一度朝鮮に戻ってから日本に密航してきた場合、いったん非正規滞在者となり、その後の在留特別許可で「特別永住者」以外の在留資格(「定住者」など)を取得している場合がある。
 在留資格は、活動に基づく在留資格と、身分に基づく在留資格に大別される。身分に基づく在留資格は「永住者」、「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」、「定住者」だ。「特別永住者」はその歴史的な経緯からも実際の運用上、「身分に基づく在留資格」というより「法的地位」として取り扱われている。身分に基づく在留資格は、活動制限がなく、就労も自由にできる。活動に基づく在留資格に比較して、身分に基づく在留資格は「安定度」が高いと言えよう。

●2 在留資格の取消と在留特別許可

 しかし、「特別永住者」を含め、すべての在留資格は「許可」である以上、取り消しが可能だ。どのような条件によって取り消しされるかは「入管法」「入管特例法」にそれぞれ明記されている。しかしそれでも「特別永住者」は一九九一年以降、取り消された例は滅多にないようだ。
 一方、「永住者」を含め滞日外国人の在留資格は取り消しが多い。二〇一六年の在留資格取り消し件数は、二九四件だったのに対し、一七年三八五件、一八年八三二件と急増し、二〇年には一二一〇件と、四年で約六倍にもなっている。この四年間では「教授」、「医療」や「特別永住者」を除くほとんどすべての在留資格において取り消しがある。特に取り消しの増加率が激しいのは「技能実習」と「留学」だ。
 「技能実習」の取り消し理由は、本人の逃亡や在留資格の期限が切れた後のオーバーステイ就労が多い。しかしこれは結局のところ、安価な労働力として外国人を奴隷のように扱い、数年での使い捨てが許されているような技能実習制度自体が生み出している結果だと言える。「留学」の取り消しについては、本来の目的である学業ではなくアルバイト就労などをメインに行って残留していたことを理由とした取り消しが多い。しかし、以前から日本は「留学」の在留資格をもってして日本で働く外国人を日本経済の下支えとして黙認してきた。しかしだんだんと日本の支配層が、非正規滞在者や「留学生」の労働力に頼るのではなく、技能実習、特定技能制度といういつでも使い捨ての可能な、管理のより容易な制度の下に外国人労働力を集約してしまおうという方向に舵を切った。それと連携して入管が、非正規滞在者ならびに「留学生」などの非合法就労の摘発をここ数年間強化して来たことが、在留資格取り消し件数の急増に繋がった。
 在留資格の取り消しを受けた者の何割かは非正規滞在者になってしまう。現在、日本での居住を望む非正規滞在者は約三〇〇〇人ほどだと言われている。彼らが日本に住みたいと望み、その理由を持っている以上、彼らには在留資格が本来的に与えられるべきだと私たちは考える。
 非正規滞在者に在留資格を与えるのは主に「在留特別許可」という制度によって行われる(その他訴訟の方法もある)。これは「法務大臣が特別に在留を許可する事情が認められる場合」になされる。元々は旧植民地出身者が法令違反(外登法違反など)で在留資格を取り消された場合の救済措置として主に運用されてきた。しかし一九九一年の入管特例法施行以降はその取り消しが減少し、近年は主にニューカマーの救済措置として機能している。在留特別許可と言っても、特別の在留資格があるのではなく、現在ある在留資格のどれかに振り分けられる(「定住者」「日本人の配偶者等」など)。ちなみに難民認定された者は原則五年の「定住者」になる。
 今回、ロシアのウクライナ侵略を受けて、ウクライナからの「避難民」に一年間の「特定活動」の在留資格を与えると日本政府は発表している。あくまでも「難民」ではなく「避難民」としての受け入れ表明で、ベトナム・ラオス・カンボジアからの難民の時の例にならっての、難民認定制度を通さずに、ある一定の属性を持つ集団に暫定的な在留資格を与えるという緊急措置だ。だがそもそもウクライナからの避難民は難民に間違いないし、家族呼び寄せ不可など制約の多い「特定活動」ではなく、難民認定した上での「定住者」の在留資格を与えるべきだ。また一方で、二〇二〇年の難民申請処理数五四三九人に対し、難民認定した数は四九人(認定率1%未満)という、難民認定を頑なに出そうとせず非正規滞在者を生み出し続けている日本政府の姿勢がある。入管体制、難民認定制度そのものが日本政府の政治的思惑によって意のままに操れるものだということを物語っている。

●3 生活保護制度から排除された外国人

 この「ウクライナ避難民」に与えられるという「特定活動」はやや特殊な在留資格で、かなり広範な理由によって滞在する外国人に対して与えられる。ワーキングホリデー、日本の大学を卒業した外国人の就職活動、滞日の家族の介護、退去強制命令の発布を受けた者の出国のための準備などの理由で許可される。就労可のものと就労不可のものがあり、難民申請中の者にも「特定活動」が与えられることがあるが、そちらでは基本的に就労不可の短期の「特定活動」が与えられることが多く、そのために難民申請者は収入がなく生活が困窮している。生活保護の外国人への「準用」は、「永住者」「日本人の配偶者等」「定住者」など、身分に基づく在留資格保有者に対してのみ、あくまで恩恵として可能だ(外国人への生活保護の準用が認められたのは一九五四年通達による。その時点では在留資格の種類による排除は明文としてはなかった。一九九〇年の口頭指示によって永住外国人のみに限定)。
 今回のウクライナ避難民に与えられるのは就労可の「特定活動」だ。就労に制限のない「特定活動」の場合、それは活動に制限のない、実質的に身分に基づく在留資格として、生活保護の準用が可能と解すべきだという主張がある。実際、就労可の「特定活動」保有者には、生活保護の準用の例はある。だが結局のところ、生活保護の準用は行政との力関係の中で決定されるのだろう(かなり厳しいが、一九九〇年の口頭指示以降も非正規滞在者に生活保護を適用させた例は存在する)。
 当然だが、在留資格の種類や有無で生活保護からの排除をすべきではない。日本政府は一九八一年難民条約加入以降、増えて行く一方の難民申請者や出稼ぎ外国人労働者への生活保障コストをカットしたいという思惑の中で、一九九〇年以降に確信犯的に排除を行って来たのだ。許しがたいことである。在留資格を求める運動と同時に、命の問題として福祉の側からのアプローチの必要性も個人的には感じる。
 在留資格や入管体制の制度は複雑で、法律、制度の理解だけでなしに運用の例や裁判の判決も見ないと実際のところが分からないことが多い。ここで述べたものはあらましに過ぎず、不足も多いと思う。外国人当事者と実際の関係性を構築して行く上では、在留資格についてなど最低限の基本的なことは知っておくべきだろう。だが当然、立ち上がる外国人との連帯や、外国人差別と闘う不断の実践が最も重要である。共に闘い続けよう。



 


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